論子さんは、夫とその両親、三人の子どもの七人家族です。大所帯の一家にはいつも何かしら問題が起こっているらしく、今日もリビングの机で次男の路夫君が何やらブツブツつぶやいています。

 

論子「路夫、宿題はやったの?」

 

路夫「いまやっているところなんだけどさぁ。ちっとも解らないんだよ」

 

論子「わからないって何が解らないの?」

 

路夫「今日、学校で社会人講話ってのがあって、会社の社長さんって人が来て、いろいろ為になる話をしてくれたんだよ。その感想文を書かなきゃいけないんだけどさ」

 

論子「それの何が難しいの?思った通りを書けばいいんじゃない?」

 

路夫「だけどさあ・・・」

 

路夫「お母さん、『くらいあんと』って何のこと?」

 

論子「お客様っていう意味かな」

路夫「じゃあ、『こんぷらいあんす』って?」

 

論子「決まり事や、規則を守ることかしら」

 

路夫「なんだ。そうか、なら最初からそんなふうに言ってくれればいいんだよ。何言ってるかさっぱりわからなかった。」

 

論子「あら、あなただってガチとかイチキタとかお母さんにわからない言葉使うじゃない。」

路夫「・・・・・・それはさぁ、別に僕たちには通じるからいいんだよ。」

 

論子「ふーん、そうなの。」

 

「でも、せっかくの良い話も相手が解からないんじゃ台無しね。」

 

論子「で、他にわからない言葉は?お母さんに解かればだけど。」

 

さてこんな時、論語ではなんて謂うでしょうか?

 

 『辞は達するのみ』 季氏第十七―四一 仮名論語244P

 

<伊與田先生訳>

 

 先師が言われた。 

 

 『言葉や文章は、思いを正確に伝えることが大切である』

 

<解説>

 

 お友達と話しをする時、相手の人がちゃんと分かっているか確かめて話していますか。

 

 「辞」は「ことば」という意味です。

 

 話は一人ではしないよね。話には必ず相手が居る。それは一人の時もあれば、大勢の場合もある。

 

 言葉は自分の考えている事や伝えたい事を解かってもらうために使うのだからね。

 

 それなのに相手に解からない言葉を使ったり、まだよく理解していないままどんどん話をしたって意味がありません。

 

 

 

 「辞(ことば)」は相手にちゃんと伝わったかが、一番重要なのです。