路夫君はお父さんに連れられて市の博物館に社会見学にやって来ました。そこには古い土器や道具がいっぱい。イベント会場では石をたたいて火おこし体験をやっています。

 
路夫「お父さん、あれ面白そうだからやっていい?」
貢 「いいとも。やってごらん」
路夫「あれ、うーーーーん。中々火が点かない。」
貢 「どれ、お父さんもやってみようかな。本当だ。なかなか大変だぞ。」
路夫「昔の人って大変だったんだねぇ。今ならライターとかで一発で点くのに。」
貢 「そうだな。でもライターの原理はこの石をたたき合わせて火花を作ることから発明されたんだよ。」
路夫「えー。そうなの。なんか原始的な感じだな。」

 

貢 「そうだね。僕らのずっと前のご先様たちは、生きていくためにいろいろな工夫をしてきたんだ。今ある物も、全部その後の人たちが考えて、より良いものに改良したりしてきたんだよ」
路夫「ほとんど全部?」
貢 「そうだよ。たとえば今使っている字や作物の作り方や天気予報とかだって昔の人が一生懸命考えてくれたおかげなんだ。」
路夫「今は何でもパソコンとかでパパッと出て便利だけどね。」
貢 「そうだな。だから今は昔の事を忘れてしまいがちだけど、新しい発見をするためには、どうしてそうなったか、キチンと基礎を学んでおかないとだめなんだよ。」
路夫「えー。どうして?」
貢 「路夫は一年生の時、ひらがなや足し算から勉強を始めただろう?そして学年が上がると順々に難しい漢字や計算の勉強をするようになってくる。だから言葉の成り立ちや計算の仕組みが解る。それをだんだん深めていって研究していくと、また新しい発見が出来てくるんだよ」
貢 「ほら、あの学芸員の先生のようにな」
  「路夫、お父さんもだめだ。どうやったら上手に点くか先生に聞いてきてくれよ。」

 

さてこんな時、論語ではなんて言うでしょうか。

『故きを温ねて新しきを知る。以て師となるべし。』
                                   為政第二(「仮名論語」十六頁)
《伊與田先生訳》
古いことを尋ねてそこから新しいことを知るものは、人の指導者となることができる
《解説》
スポーツでも絵を書く事でも、『基本が大切』と言われた事はないですか。基本がしっかりしていないとなかなか上手にはならないでしょ。生きていく基本は昔の教えの中にあります。
私たちが暮らしている世界は全部だれかが考えたり、工夫してくれた上にできています。
 
昔の人はまだ何も分らない中から、自分たちが失敗したり、間違ったりした事を、次の人が同じような目にあわないように、言い伝えたり、書き残したりしてくれていて、今の私たちが間違わずに暮らして行けるようになっているのです。物事には何でも『成り立ち』があってその道すじを知らなければ『なぜ今こうなってるのか』本当のところは分からないものです。
きちんと基礎を学んで、その中から新しいものを発見したり、物事を考えたりできる人は次に進むためのリーダーになれますが、基本を学ばず今の本を読んだ知識だけで何でも分かったように思っている人は真のリーダーになれる人ではありません。