夕方のリビング、学校から帰って来た路夫君が何かもじもじしています。何か言いにくい話があるようです。

論子「路夫、どうしたの?お母さんに何か話したい事でもあるの?」

路夫「・・・・」

論子「何か言いにくい事があるのね。でもそんな事こそ早く話してしまった方がいいわよ。何?」

路夫「こないだの算数のテスト今日返されてきたんだけど・・・」

論子「あぁあの苦手な分数の計算のやつね」

路夫「ごめんなさい。すっごく悪かったんだ。」

論子「まあ。45点?これはひどいわね。」

論子「学校でちゃんと習ってこなかったの?たしか先生が解らないところのある子は残って教えてるって聞いたけど。」

路夫「・・・うん。」「そうなんだけと・・」

路夫「だって居残りなんて格好わるいから」

  「だから先生に解るかって聞かれたときつい解りますって答えちゃったんだ。」

論子「まぁ。」

路夫「だから、その次の日の授業もチンプンカンプンで、そしたらテストでこんなことになっちゃったんだ。」

論子「それじゃあ仕方がないわね。」「解らないのに解ったふりをしちゃったら先生だって路夫はもう出来ると思うでしょうし。」

路夫「いまさら先生には言えないよ。どうしたらいい?おかあさん。」

論子「しょうがないわねぇ。今回は学お兄ちゃんにお願いして教えてもらいなさい。」

  「だけど、今度からはちゃんと先生に言うのよ。解らないことを解らないって言う事はちっとも恥ずかしいことじゃないんだから。むしろこの点数の方がよっぽと恥ずかしいってお母さん思うな。」

路夫「わかった。それからお母さん、実は今日の宿題のこの問題もわからないんだけど、お兄ちゃんに聞いていいかな。」

論子「・・・・・・やれやれ。」

  

さて、こんな時、論語では何て言うでしょうか。

『之知るを之知ると為し、知らざるを知らずと爲す。是れ知るなり。』

 

為政第二 仮名論語18P

 

〈伊與田先生訳〉

 知っていることは知っている。知らないことは知らないと素直に言えるのが本当に知るということだ

 

 

解説

 友だちと話をしている時に、みんなが知っていて自分が知らないことがあった時。つい知ったかぶりをしてしまうことってあるよね。

 でも、それが大切な事だったらどうかな。たとえば災害の時の非難の場所や行き方をちゃんと知らなかったら、逃げ遅れてしまうかも知れないし、それより君が知ってると思って他の人がついてきちゃったりしたらそれこそ大変なことになります。

『知らない』という事は勇気のいることだけどそれがちゃんと言えることの方がずっと格好いい事なんだよ。