論子さんの家のリビング。子どもたちのにぎやかな声が聞こえてきます。みんなでゲーム大会のようです。
路夫『上がりぃ!』
仁実『もう、また路夫お兄ちゃんの勝ちなの。』
路夫『えへへ。まだまだ仁実には負けないさ。もう一回やろう!』
仁実『もうやめる。だってさっきから一回も勝てないんだもん。つまんないよ。お兄ちゃん大きいんだから勝ってあたり前でしょ。』
路夫『そんな事ないよ。だって学お兄ちゃんやお祖父ちゃん達にだって勝ってるんだから、年なんて関係ないよ。』
仁実『でも何か悔しいからやらない。』
仁実ちゃんは怒ってどこかに行ってしまいました。ゲーム大会はお開きです。
路夫『ちぇっ。仁実ったらせっかく楽しかったのにさ。』
論子『路夫、どうしたの?仁実泣いて台所に来たけど』
路夫『僕は悪くないよ。仁実が弱いから悪いんだ。』
お祖父ちゃんの真一さんが路夫君に言いました。
真一『路夫、お前は本当にお兄ちゃんより強いと思っているのかい?』
路夫『そりゃそうだよ。だって五連勝だもの』
真一『そうか。路夫ちょっと考えてごらん。ゲームでも何でも、人は誰でも自分が一番になりたいものさ。でも今回のように小さい子を泣かしてまで勝つ必用があるかい?お兄ちゃんはそれが分っているから何とか仁実に勝たせてやろうと思ってたんじゃないかな。』
路夫『そうか、そうだね。僕、考えてなかったよ。そんなこと』
さて、こんなとき論語では何ていうでしょうか。
夫れ仁者は己立たんと欲して人を立て、
己達せんと欲して人を達す
(仮名論語P79 雍也第六)
解説
ゲームで勝ちたい!すごく分るよね。誰でも自分が一番でいたいものです。でも自分が思っていると言う事は他の人も同じように考えているということです。
災害にあった時にみんなが欲しいものを全部一人が買い占めたりしたらどうでしょう。家に有り余るほど水を買って、自分だけが満足。でもそのために赤ちゃんのミルクを作るための水が無かった。という話がありました。
人は分かち合う事を知ってる生き物です。相手を思いやり、やさしい心でいれば、自分が勝てなくてもちっとも残念な事はありまん。そんな人の方がかっこいいと思いませんか。